東京高等裁判所 昭和37年(ラ)356号 決定
本件抗告理由は、前記訴訟事件について、抗告人(原告)は目的物件に対する差押の排除を求めるため物件の価格四万九千七百円を標準として訴状に金五百円の印紙を貼用したところ、裁判官はこれに千九百七十円の追貼を昭和三十七年六月十一日までにするように命令を発し右命令は同年四月三十日抗告人に告知されたが右期間中に追貼をしなかつたという理由により本件訴状却下命令がなされたのである。しかし抗告人は本件強制執行の排除を求めるため適法な印紙を貼用したものであつて、これを認めないでした原決定は不当である、というのである。
職権によつて案じるに、記録によると、本件訴状は昭和三十七年四月二日前橋地方裁判所桐生支部に提出せられ、右訴状の副本は第一回の口頭弁論期日の呼出状とともに同年四月六日被告に送達せられ、右事件の第一回口頭弁論期日たる同年四月三十日午後一時には原告並に被告代理人出頭し訴状の陳述、答弁書の陳述がなされたことが明かである。
したがつて本件はすでに口頭弁論が開始せられたのであるから、その後に及び原告において原審裁判官の為した印紙追貼命令(此の命令自体の正当なこというまでもない)に従つて訴状に所要の印紙を追貼しないことが明確となつたとしても裁判官は民事訴訟法第二二八条による訴状却下の命令をなし得ないものであり、斯る場合は同法第二〇二条にいわゆる不適法な訴にしてその欠缺が補正できない場合として判決をもつて訴を却下すべきものと解するを相当とする。蓋し裁判長又は単独裁判官が民事訴訟法第二二八条によつて訴状却下の裁判を為し得るのは、訴状を被告に送達する以前の措置であり、被告との関係に於て訴訟繋属関係の生じた後は判決を以て解決すべきだからである。
(鈴木忠 谷口 宮崎)